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マン 壁画の前で
台湾の絵本作家・幾米(ジミー)作品、
初のアニメーション化


とくに、この新作で注目されるのは、キャロル・ライのたっての希望で、 台湾の人気絵本作家ジミー(幾米)の作品が使われていることである。 ジミーは、一見ペイネを思わせるロマンティックな作風が特徴だが、 白血病で死を意識したことをきっかけに創作活動に入ったというだけあって、 その作品には、常に“喪失”の感情を内包させた“再生”への美しい祈りが込められている。
とくに99年に発表した「君のいる場所」は中国圏をはじめ、日本、韓国、欧米各国でも翻訳され、 数多くの熱狂的なファンを獲得しており、ジョニー・トー、ワイ・カーファイ共同監督、 金城武主演の『ターンレフト ターンライト』の原作でもある。最近では、絵本「地下鉄」がウォン・カーウァイ製作、 トニー・レオン主演で映画化されるなど、今や、才能ある映画人の創作意欲を限りなく刺激する存在となっている。
『恋の風景』ではラストシーン、ジミーが描きおろした10枚の作画を元に、 初のアニメーション化がなされ、効果的に挿入されている。 同時にこの映画そのものがジミーの原作であるかのような世界観を持ち、 ジミーのモチーフでもある美しい孤独の風景を内包した作品であるとも言えよう。
“恋の風景” それは誰もが心の中に持っている風景

病死した恋人が遺した一枚の絵に描かれた風景を捜し求めるヒロインのあてどない彷徨の日々を繊細に描き、 2003年のヴェネチア国際映画祭コンペティション部門や釜山映画祭、 第5回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映されるや、称賛を浴びた『恋の風景』。
この作品は、長篇デビュー作『金魚のしずく』(01)で、 その透明感あふれるポップ・アートのような斬新な映像センスが注目され、 香港インディーズ・シーンに久々に現れた逸材として高い評価を受けた女性監督キャロル・ライの第二作である。 『恋の風景』は、香港、中国、日本、フランスの合作で製作されたことからも伺えるように、 キャロル・ライが、国際的なスケール感をもった卓越した才能として認知されたことを鮮やかに示したといえるだろう。

アジアの才能の見事なコラボレーション

主役のマンを演じるのは『男人四十』『カルマ』など、今最も注目を集める香港の新星カリーナ・ラム。 シャオリエに扮したのは、大ヒット作『山の郵便配達』や『小さな中国のお針子』のリィウ・イェ。 そして回想シーンに登場するサムを演じたのは、アジアの若手大スター、イーキン・チェン。
監督は『金魚のしずく』のキャロル・ライ。前作と同様“追憶”と“彷徨”をテーマに見事な世界観を見せつけている。 また本作で香港アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した『恋する天使』『不夜城』などを手がけたアーサー・ウォンが 撮影監督として名を連ね、やはりキャロル・ライの積年の希望で実現した梅林茂(『それから』『花様年華』『LOVERS』『2046』など)の音楽も、 喪失と再生の感情を美しい旋律で表現している。

監督:キャロル・ライ
主演:カリーナ・ラム/リィウ・イェ/イーキン・チェン
製作:Filmko Entertainment & NHK
協力:NHKエンタープライズ21
プロデューサー:スタンリー・クワン/
アーサー・ウォン/上田信
脚本:キャロル・ライ/ライ・ホー
撮影監督:アーサー・ウォン
音楽:梅林茂
イラストレーション:幾米(ジミ―)
2003年/香港+中国+日本+フランス合作/1時間45分