アメリカン・マフィア FACES

アメリカン・マフィア [完全版] DVD-BOX 重版記念
  • ジェームズ・"ビッグ ジム"・コロシモ (1878-1920) イタリア カラブリア生まれ。1910 年代のシカゴで売春と賭博で勢力を築いたマフィアのボス。写真左は若い歌手のたまごで再婚相手のデール・ウィンター。現状の商売に満足していたコロシモは、当局や他の勢力とトラブルになることを嫌い、禁酒法下での酒の密売に反対した。その結果ジョニー・トーリオとアル・カポネの裏切りにあい暗殺された。
  • ベンジャミン・"ドーピー･ベニー"・ファイン (1889-1962) ニューヨーク生まれのユダヤ系ギャング。病気のせいでいつも目が半分閉じたようになっていたため「ドーピー(眠そうな) ・ベニー」と呼ばれた。1910 年代地元のロワーイーストサイドを拠点に、"レイバー・スラッガー" (組合の用心棒) を束ねるリーダーとして名を馳せた。会社側に雇われたギャングに対抗したり、組合の邪魔になる者を脅し・痛めつけるのが主な仕事。異色なのは、お針子を組合に加入させるため女性部隊も雇っていたこと。性別で区別せず成果主義で報酬を支払ったという。当時ニューヨークで盛んだった衣料産業の組合を中心に食い込み、一時はレプケ･バカルターなどを部下にして大きな勢力を誇ったが、他のギャングとの抗争のなか殺人容疑で逮捕され、影響力を失っていった。2 度の刑務所暮らしを経て、後年はブルックリンで父と同じ仕立て屋を営んだという。
  • アーノルド・ロススタイン (1882-1928) 表の顔は金持ちの実業家、一方でユダヤ系マフィアの中心人物でもあった。1919 年ワールドシリーズでの八百長「ブラックソックス事件」の黒幕として知られる。"ザ・ブレイン" のニックネームを持つ切れ者で、賭博と禁酒法下での密造酒・麻薬で財をなした。組織犯罪のありようを、愚連隊の乱暴な稼ぎから大金の動くビジネスに変えた最初の一人。裏社会の「事業」に資金を提供し、民主党の集票マシーン「タマニー・ホール」を通じて政界とのパイプも築いていた。彼自身は生涯一度も逮捕されていない。マイヤー・ランスキー、ラッキー・ルチアーノ、ダッチ・シュルツなどの面々が若き日、彼の下で働いていた。後年ルチアーノは「彼が服の着こなしやテーブルマナーといったものを教えてくれた」と語っている。1928 年 賭博がらみのトラブルからマンハッタンのホテルで撃たれ死亡。相棒をロススタインの部下に殺されたダッチ・シュルツの復讐という説もある。
  • アーノルド・ロススタイン (1882-1928) ロススタインは禁酒法時代初期、ニューヨーク市じゅうの密輸取引・地下酒場に資金提供しただけでなく、2 つのブロードウェイ演劇のスポンサーでもあった。1 つはユダヤ系青年とアイルランド系女性の宗教を越えた恋 (自分のパターンと同じでもある) を描きヒットした "Abie's Irish Rose" 。もう 1 つがキャスト全員がアフリカ系アメリカ人という意欲作 (それだけに敢えて出資しようという人間はほとんどいなかった ) "Shuffle Along" である。 文： Arnold Rothstein and the 1928 Election 写真: new york times book review 'King of the Jews': The Man Who Fixed the World Series : 1 Adults Americans Arnold Rothstein Bankruptcy Economic issues Half-length Justice Law Males Men Mid-Atlantic Middle-aged Middle-aged man New York City New York State New York State Supreme Court North America North Americans People Prominent persons Social issues USA Whites
  • ビル・ロベット (1894-1923) アイルランド系ギャング。ブルックリンで勢力を誇った「ホワイトハンド」のボスとして知られる。1923 年、非合法活動から足を洗おうとボスの座を義弟で幹部のリチャード・ロナガンに譲り郊外に移った。しかし就職面接のため戻ったニューヨークで旧友たちと酒を飲み、その後酔いつぶれているところを何者かに殺害された。対立していたイタリア系のブラックハンドの犯行とも、同じアイルランド系ギャングの犯行ともいわれる。
  • ウィリアム・"ワイルド・ビル"・ロベット (1894-1923)
  • フランキー･イェール （1893～1928） イタリア カラブリア生まれ。イタリア系ギャング「ブラック･ハンド」のボスとして、ニューヨークに君臨した。最初の有名なゴッドファーザー。残忍さの反面で義賊のような行動でも知られ、金持ちから奪った物を貧しい人々に分け与えることで人気があった。アル･カポネを部下として重用したが、シカゴに移ったカポネとの取引で不正を行ったと疑われ、1928 年カポネの一味によって暗殺された。
  • フランキー･イェール （1893～1928）
  • ダイオン・オバニオン (1892-1924) 写真： stanby life
  • ジョニー・"ザ フォックス"・トーリオ （1882～1957） イタリア南部 バジリカータ州/ブッリャ州生まれ。ナポリ生まれとも。未亡人の母親に連れられ 2 才でニューヨークに移住。少年ギャングのリーダー時代からナンバー賭博等で成功し、経営の才で一目置かれる存在だった。シカゴに移った後は、ボスでオーナーのコロシモにかわって、全事業を管理し手腕を発揮した。その際、トーリオの武力となったのがアル・カポネである。コロシモ暗殺後はシカゴ・マフィアのボスとなり、密造酒・賭博・売春から巨利を得ていたが、アイルランド系ギャングとの関係がこじれ、襲撃で重傷を負う。潮時を悟ったトーリオはカポネに縄張りを譲り引退した。だが引退後も、コミッションの前身となる会議に「長老」「相談役」として招かれるなど、後進にその知恵を貸した。カポネを追い詰めた歳入庁チームのリーダーはトーリオを「最も賢いギャング」と評している。ブルックリンの散髪屋で心臓発作を起こし、75 歳で死亡。 : Johnny Torrio Kopf- und Schulterportr舩 Person Portr舩 Regierung
  • "パパ ジョニー"・トーリオ （1882～1957）
  • アル･カポネ (1899～1947) ナポリ移民の子。ニューヨーク生まれ。14才で厳格なカトリック学校をドロップアウト、地元の不良少年たちに仲間入りする。フランキー･イェールに認められて本格的に暗黒街に入った。1919年に殺人容疑での逮捕が迫っていたためシカゴへ逃げ、ジョニー･トーリオの部下となる。20 代半ばでトーリオから縄張りを引き継いだ後は、次々と敵を抹殺、政治家・警察も買収し、シカゴの非合法ビジネスの大半を支配する一大勢力を築いていった。1928年には酒の密売取引で不正を働いたとしてかつてのボス、イェールを暗殺している。1929年、対立していたアイルランド系ギャングのモラン一味をマシンガンで惨殺。事件は「聖バレンタインデーの虐殺」としてマフィア史に刻まれた。暗黒街の帝王と呼ばれ、強大な権力を誇ったカポネだが、1931年に脱税で投獄される。1939年に出所したものの、重い梅毒のため暗黒街へのカムバックは果たせなかった。1947年、脳内出血と肺炎の併発により死亡。顔につけられたナイフ傷からついたニックネームが「スカーフェイス」。カポネをモデルにした映画やテレビドラマは数多く作られ、今も歴史上最も有名なギャングとして語り伝えられている。
  • アル･カポネ (1899～1947)
  • 息子のソニーとカポネ。野球場にて
  • 雑誌『TIME』の表紙を飾る
  • アルバート・アンセルミ (1883-1929) シチリア生まれのヒットマン。1924 年にマフィア撲滅作戦から逃れて 40 代でアメリカに渡る。同じシチリア出身の若いジョン・スカリーゼと組み、最初はジェンナ兄弟、その後アル・カポネのために殺し屋として働いた。1925年警官殺害の罪で 14 年の懲役となるが再審では正当防衛として無罪 となる。法廷では通訳を使い英語はほとんど話せない様子だった。ヒットマンのコンビは 1929年 2月の「聖バレンタインデーの虐殺」でも襲撃チームの一員だった。その「実力」でカポネ配下の有力なメンバーとなり羽振りの良い生活も手に入れていたが、同年 5 月インディアナ州ハモンドの人気のない道沿いで、ジョン・スカリーゼ、ジョー・ジューンタとともに死体で発見される。彼らはひどく殴打され、膝・胸・顔に銃弾を受けていた。
  • ジョン・スカリーゼ (1900-1929) シチリア生まれのヒットマン。アルバート・アンセルミとコンビを組み、最初はジェンナ兄弟、その後アル・カポネのために殺し屋として働いた。コンビはダイオン・オバニオン、フランキー・イェールといった大物ボス暗殺の実行犯ともいわれている。1929年の「聖バレンタインデーの虐殺」でも襲撃チームの一員だった。この頃にはスカリーゼはカポネ配下の有力メンバーとなり、マフィアのフロント組織「シチリア人同盟」の副会長にも選ばれていた。(会長はジョー・ジューンタ) しかし 1929 年 5 月、インディアナ州ハモンドの人気のない道沿いで、ジョン・スカリーゼ、ジョー・ジューンタとともに死体となって発見された。事件直後はアイルランド系ギャングの報復が疑われたが、その後、「カポネへの裏切りが発覚し粛清された」という見方が広がった。
  • アンセルミとスカリーゼ 写真は MY AL CAPONE MUSEUM, Alberto Anselmi and Giovanni Scalise killer twins より
  • マックス・"ブー･ブー"･ホフ （1893～1941） ユダヤ系ロシア人移民の子。フィラデルフィアのギャング。地元の警察や政治家と強いつながりを持ち、禁酒法時代に酒の密売やボクシングの興行で大金を稼いだ。しかし彼自身は酒もタバコもやらなかったという。禁酒法廃止以後は、脱税で起訴されるなど運も尽き、無一文で亡くなった。
  • ホフとボクサーたち 自分のボクシングジムを「マックス・ホフ・インク」という名前でアメリカで初めて会社化した。 Remembering Max "Boo Boo" Hoff
  • ダッチ･シュルツ （1902～1935） ニューヨーク生まれ。ユダヤ系ドイツ人移民の子。本名アーサー・フレゲンハイマー。禁酒法時代にブロンクスでのビール取引でのしあがり、ハーレムでのナンバー賭博も取り仕切った。ラッキー・ルチアーノとは同盟を結んでおり初期コミッションの一員。性急かつ暴力的な手法で縄張りを拡大し、ライバルや離反した部下との派手な抗争を次々に引き起こした。シュルツの名は新聞を賑わせ、当局はカポネで成功した「脱税」による追求を始めた。特別検察官トーマス･ E ･デューイによって追い詰められると、シュルツはついにデューイ暗殺を企てる。だが暗殺の反動を恐れたコミッションは、逆にコントロールの利かないシュルツを排除する決定を下した。1935年、ニューアークのバーで銃撃され、翌日病院で死亡。シュルツが混濁した意識の中で発した言葉には、なぜか不思議な詩のような魅力があり、のちのビート世代の詩人・作家に影響を与えた。ウィリアム・バロウズ作『ダッチ・シュルツ 最期の言葉』もその一つ。 写真: NEW YORK CITY GANGLAND (Images of America)
  • ダッチ･シュルツ （1902～1935） 『ダッチ・シュルツの消えた財宝』　ダッチ・シュルツは貯め込んだ稼ぎを特別な金庫に入れニューヨーク州中部のキャッツキル山地に埋めたという都市伝説がある。 Dutch Schultz and His Lost Catskills' Treasure
  • ダッチ･シュルツ （1902 ～1935） トイレで銃撃された後、シュルツはなんとかその場を這い出しテーブルに戻った。現場には救急車や警察より早くパパラッチが駆けつけ写真を撮った。
  • ベニート・ムッソリーニ (1883-1945) イタリア北部フォルリ=チェゼーナ県プレダッピオ生まれ。イタリアの政治家、独裁者。1922年の「ローマ進軍」で政権の座につくと、国内のマフィア等犯罪組織を徹底した取り締まりで壊滅寸前まで追い込んだ。ムッソリーニがシチリアに送り込んだチェーザレ・モーリは「村全体の制圧」、「拷問」、「人質をとる」といった荒っぽい方法で多数の山賊・マフィアを検挙、「鉄の知事」と恐れられた。追求はファシスト党幹部にまで及んだため、ムッソリーニは1929年モーリを解任したが、マフィア撲滅作戦の成功はファシスト党の成果として大いに喧伝された。
  • ジュゼッペ･マッセリア （1886～1931） シチリア生まれ。殺人容疑から逃れるためアメリカに移民した。通称ジョー･ザ･ボス。1920年代半ばにニューヨークの有力なボスとなり、ラッキー･ルチアーノ、フランク･コステロ、ヴィト･ジェノヴェーゼといった次代の大物たちを配下においていた。サルバトーレ･マランツァーノと「ボスの中のボス」の座をめぐって争うが（「カステランマレーゼ戦争」）、1931年、マランツァーノ側に寝返ったルチアーノやジェノヴェーゼたちに暗殺される。
  • サルバトーレ･マランツァーノ （1886～1931） シチリア生まれ。1918年、地元マフィアのドンの命を受けニューヨークに渡った。まもなくブルックリンに拠点を築き、シチリア カステランマーレ出身のマフィアを束ねるリーダーとなる。彼は同じシチリア出身の強大な敵、ジョー・マッセリアとの熾烈な抗争も制した。勝利後、マフィアを一堂に集め、ニューヨークのイタリア系マフィアを 5 つに分割・再編すること、また自らが「ボスの中のボス」となることを宣言した。ローマ帝国史に通じ、カエサルに心酔するインテリでもあった彼が頂点を極めた瞬間だった。最後の仕上げが、ユダヤ系マフィアと強い絆を持つラッキー・ルチアーノら新世代の危険分子の排除になるはずだった。しかし彼の計画はもれ、ルチアーノとランスキーのコンビによって逆に葬むられることになる。
  • ヴィンセント・マンガーノ (1888-1951) シチリア生まれ。ニューヨーク 5 大ファミリーの 1 つマンガーノ・ファミリー（のちのガンビーノ・ファミリー) を率いたボス。ルチアーノらが旧世代のボスを一掃した後も古株ではあったが地位を維持した。しかし 1951年、側近の弟フィリップが死体で発見され、同日マンガーノ自身の姿も忽然と消えた。マンガーノと日頃から確執のあった副ボス、アルバート・アナスタシアによる犯行と考えられている。
  • アルバート･アナスタシア （1903～1957） イタリア カラブリア生まれ。ニューヨークの波止場を支配したギャングで、組合の名を借りて労働者と経営者の双方から金をしぼり取った。またその際立った冷酷さから「マーダー・インク」の死刑執行人と恐れられた。何度も殺人で起訴されたが、そのたびに証人は失踪するか証言を拒否した。ボスであるヴィンセント･マンガーノの「失踪」後ファミリーのトップとなる。武闘派としてコミッション議長のフランク･コステロを支えていたが、コステロを追い落としたヴィト･ジェノヴェーゼによって1957年に暗殺。散髪中にくつろいでいるところを襲撃された。
  • アルバート･アナスタシア （1903～1957）
  • アルバート･アナスタシア （1903～1957）
  • ルイス･"レプケ"･バカルター （1897～1944） ニューヨーク生まれのユダヤ系ギャング。労働運動を食い物にし、企業や組合に対する恐喝などを続けた。コミッションのための暗殺組織「マーダー・インク」のリーダーでもあった。( マーダー・インクはメディアによる命名) 特別検察官トーマス･E･デューイの厳しい追及を受け、FBI 長官フーバーの下に自首して出たが、1944年に殺人罪で死刑となる。電気椅子で死んだ唯一の大物ギャングと言われている。
  • ルイス･"レプケ"･バカルター （1897～1944） "レプケ"はイディッシュ語で「小さなルイス」の意味。子供時代、母親からそう呼ばれていた。
  • ラッキー･ルチアーノ（1897～1962） シチリア生まれ。1906年、貧しい両親に連れられニューヨークに移住した。本名サルバトーレ･ルカーニア。マフィア史上最大の大物の一人である。マッセリアの下に No.2 としてついた後、ライバルのマランツァーノ側に寝返るのを断り重傷を負った。それでも命は助かったことから「ラッキー」というニックネームが付いたという。アメリカ育ちの新世代マフィアを糾合した彼は、1931 年マッセリア、マランツァーノの 2 大巨頭を相次いで葬り、旧世代のボスをほぼ一掃した。33 歳にして覇権を握ったルチアーノは、抗争回避のためにコミッション を創設して議長に就任(「ボスの中のボス」ではなく)、古いしきたりに縛られていたマフィアを、ビジネスにとって合理的な組織へと作り替えていった。特別検察官のデューイは、ルチアーノを「公共の敵ナンバーワン」と名指しし、厳しく追及した。1936年、ルチアーノは強制売春容疑で逮捕・有罪となるが、その権勢は衰えず、刑務所の中から組織を動かしていた。第 2 次大戦中には米海軍に協力し、波止場でのスパイ監視活動やシチリア上陸作戦への情報提供を指示する。大戦中の功績で 1946 年に釈放されるが、イタリアへ強制送還となり、二度とアメリカに戻ることはできなかった。しかし彼がイタリア-アメリカ間に麻薬密輸ルートを築き上げたことで、マフィアの勢力はさらに拡大する結果となった。1962年、自伝映画のプロデューサーを迎えに行ったナポリ国際空港で心臓発作を起こし死亡。
  • ラッキー･ルチアーノ（1897～1962）
  • ラッキー･ルチアーノ（1897～1962）
  • ラッキー･ルチアーノ（1897～1962）
  • ルチアーノとランスキー
  • マイヤー･ランスキー （1902～1983） 旧ロシア（現ベラルーシ) グロドノ生まれのユダヤ系ギャング。ラッキー・ルチアーノとは少年時代からの友人であり、ルチアーノの参謀・強力なパートナーとして活躍した。弟分のシーゲルとは悪名高い暗殺組織「マーダー・インク」を創設している。またギャンブルをビジネスとして発展させることに力を注ぎ、バティスタ政権下のキューバにカジノを作り、ラスベガスでも大きな力を誇った。調整役に徹することが多かったため地味な存在に見えるが、長年にわたってマフィアの重鎮として君臨し続けた大物中の大物。映画『ゴッドファーザー Part Ⅱ』に登場するユダヤ系ギャング、ハイマン･ロスはランスキーがモデルとなっている。1983年、自宅のあったマイアミで肺がんにより死亡。
  • マイヤー･ランスキー （1902～1983）
  • マイヤー･ランスキー （1902～1983）
  • マイヤー･ランスキー （1902～1983）
  • ベンジャミン･“バグジー”･シーゲル （1906～1947) ニューヨーク生まれ。旧ロシア出身のユダヤ人移民の子。ランスキー、ルチアーノの少年時代からの友人で、ランスキーと共に「マーダー・インク」創設に関与した。1930年代後半西海岸に送りこまれると、早々に現地マフィアを屈服させ吸い上げた利益を組織にもたらした。ハリウッドでは持ち前の社交性でセレブ人脈に食い込み、彼らから返せと言われない金を巻き上げ、組合の乗っ取り後は、ストの脅しで映画会社も資金源に変えた。次に彼が目をつけたのがラスベガスで、戦後のまだ物不足だった1946年、豪華なカジノホテル「フラミンゴ」を完成させる。しかし建設費は予算を遙かにオーバーし、経営は赤字続き、彼の愛人は目立つ浪費を続けていた。ボスたちはバグジーが資金を着服したとみなした。バグジーの度胸と常人離れした攻撃に移る早さで、ランスキーは幾度も命を救われていた。ルチアーノが頂上を極める上で重要な殺しにはバグジーが関わっていた。彼は組織の役に立ってきたのだ。ランスキーのとりなしで挽回のチャンスが与えられたというが、背信を帳消しにする利益を届けることはできず、1947年ビバリーヒルズの愛人宅で暗殺された。しかし彼の死後、フラミンゴもラスベガスも大きな発展を遂げることになる。バグジーはギャンブル都市ラスベガスの生みの親とも言われている。
  • ベンジャミン･“バグジー”･シーゲル （1906～1947)
  • ベンジャミン･“バグジー”･シーゲル （1906～1947)
  • モー･ダリッツ （1899～1989） ユダヤ系ロシア人移民の子。禁酒法時代には、デトロイトやクリーブランドで合法的ビジネスを営むかたわら、酒の密売で大儲けをした。禁酒法廃止後は、ケンタッキー州などでカジノ経営に乗り出すが、さらなる勢力拡大を狙ってラスベガスへ進出。いくつもの表の顔と裏の顔を使い分けながら、ラスベガスの有力者として君臨した。
  • モー・ダリッツ コメディアンのボブ・ホープと
  • ガス･グリーンバウム （1894～1958） ユダヤ系のギャング。1947年6月のバグジー･シーゲルが暗殺された夜、モー･セドウェイとともにフラミンゴに乗り込み新しいオーナーとなる。以後ラスベガスの発展とともに勢力を誇った。粗暴な性格が嫌われたこと、また組織の金の使い込みが露見、1958年暗殺された。
  • アンソニー・アナスタシオ (1906-1963) アルバート・アナスタシアの実弟。(兄はファミリーネームをAnastasia と変えていた) 港湾労働者を束ねる労組の大物としてブルックリンの波止場を支配し、長年にわたりマフィアに便宜をはかった。
  • ハリー･ベネット (1892-1979) マフィアのメンバーでありながら、フォード社の人事部長という肩書きを持ち、実質ナンバーツーの地位にいた。彼の力によって、アメリカを代表する企業の 1 つであるフォード社は、組織犯罪と深く結びつくことになった。暗黒街の力を借りて労働運動を徹底的に弾圧。1932年にはデモ隊に銃弾を浴びせ、5 人が死亡したが、罪には問われなかった。
  • ジミー･ホッファ （1913 ～1975?) 最大労組である全米トラック運転手組合 (チームスター･ユニオン) の指導者として、長年にわたり不正行為を働いた。その権力はマフィアの後ろ盾によって支えられていた。司法長官ロバート･ケネディに第一の標的として狙われ、1967年には投獄されて失脚する。1971年に出所し復権を狙うものの、果たせぬまま1975年行方不明となった。マフィアによって消されたという説が有力である。
  • ジョー･コロンボ （1914～1978） ニューヨーク生まれ。父はプロファチ・ファミリー構成員。ニューヨーク 5 大ファミリーの 1 つを率いたボスであり、その隠れ蓑として1970年「イタリア系アメリカ人公民権同盟」を組織し、活発な抗議活動を行った。映画『ゴッドファーザー』から「マフィア」「コーザ・ノストラ」という言葉を削除させたのは彼である。コロンボは FBI 前でピケを張り、テレビのインタビューで発言し、講演を行った。運動は盛り上がり、全国的な注目を集めることになる。しかし目立ち過ぎるやり方は当局の厳しい追及を招いただけでなく、同業者の反感も買った。1971年「イタリア系アメリカ人団結の日 第2回集会」でコロンボは報道関係者に偽装した黒人青年から銃弾を受け、再起不能となった。これ以上マフィアに世間の注目が集まることを嫌ったカルロ･ガンビーノが、事件の背後にいるともいわれている。
  • ジェームズ・カーン (1939- ) ユダヤ系ドイツ人移民の子。映画『ゴッド・ファーザー』 (1972) でソニー・コルレオーネ役を演じた俳優。
  • ジョーゼフ･P･ケネディ （1888～1969）　 写真左。祖父がアイルランドからの移民。ジョン･F･ケネディの父。いわゆる「ケネディ王朝」の創始者。もとは株取引などで財を成したビジネスマンであったが、1920年代には酒の密売にも関わり、マフィアと生涯、関係を持ち続けた。1932年の大統領選でフランクリン･ルーズベルトの政治資金を集めたことから政界に進出し、37年にはイギリス大使にも任命された。ナチスへの宥和政策を支持したことにより政治生命を絶たれ、自分が果たせなかった大統領への夢を、息子のジョン (写真右) に託した。
  • ジョン･F･ケネディ （1917～1963） 第 35 代アメリカ合衆国大統領。選挙で選ばれた大統領としては史上最年少 (43歳)、またカトリック教徒としては初めて。雄弁と才気に恵まれ、多くの国民の支持を得たが、1963年11月テキサス州ダラスで暗殺された。すぐに容疑者としてリー･ハーヴェイ･オズワルドが逮捕されたが、暗殺事件の真相については様々な説が語られている。ケネディ家と暗黒街の深い結びつきについては多くの証拠が挙がっているが、大統領になった後のケネディは、それまでの関係を無視して、マフィアを締め付ける政策を実行した。その裏切りに怒ったマフィアが、何らかの形で暗殺事件に関わったというのが「マフィア実行説」である。
  • ロバート･ケネディ （1925～1968） ジョン･Ｆ･ケネディ大統領の弟。兄の下で司法長官を務め、組織犯罪を真っ向から追及する。兄の死後も上院議員として活躍し、1968年には大統領選への出馬を表明するが、同年ロサンゼルスで暗殺された。彼の死についても闇の部分が多く、生前厳しく追及を受けたジミー･ホッファやマフィアが黒幕だとする説もある。
  • リー・ハーヴェイ・オズワルド (1939-1963)　 ニューオリンズ生まれ。ケネディー大統領暗殺犯とされる人物。逮捕後まもなく、マフィアと関わりのあったジャック・ルビーによって殺害された。
  • サム･ジアンカーナ（1908～1975） シチリア移民の子。シカゴ生まれ。アル･カポネの部下として頭角を現し、やがてシカゴを牛耳るボスとなる。ケネディ家と古くから深いつながりを持っていた。JFKの愛人であったジュディス･キャンベルはジアンカーナの情婦でもあり、キャンベルを通じてケネディは票集めの資金を、彼のもとに運んでいたといわれている。またジアンカーナは、CIA の依頼を受けてキューバのカストロ首相の暗殺計画にも加わっていた。1975年に暗殺。
  • フランク・シナトラ (1915-1998) 「マイウェイ」など多数のヒット曲を持ち、長いキャリアを通じて人気を誇ったアメリカを代表する歌手。しかし一方で、マフィアの大物たちと深いつながりがあり、ジョン・F・ケネディーの大統領選ではサム・ジアンカーナとケネディーとの仲介役となった。
  • サント・トラフィカンテ (1914-1987) シチリア移民の子。フロリダのマフィアのボス。父からボスの座を引き継いだ。カストロ暗殺計画に加わった 3 人のマフィアのうちの 1 人。カルロス・マルセロらとともにケネディー大統領暗殺に何らかの形で関与したとの疑惑もつきまとった。しかし、トラフィカンテは一度も刑務所に入ることなく、73 歳で病気で死亡した。
  • カルロス･マルセロ （1910～1993) 両親がシチリア出身。ニューオーリンズを本拠地に、ルイジアナ州、テキサス州などの都市を支配していたマフィアのボス。司法長官ロバート･ケネディに捜査対象として狙われ、1961年に国外追放処分となるが、2 か月後に帰還する。ケネディ大統領を暗殺したとされるリー･ハーヴェイ･オズワルド及びオズワルドを殺したジャック･ルビーとつながりがあり、さらに事件の起きたダラスは彼の縄張りだったことから、暗殺に何らかの形で関与していたのではないかと見られている。1981年、FBI の周到なおとり捜査によって逮捕され、収賄の共同謀議等の罪で収監された。獄中では何度か脳卒中に見舞われその後遺症に苦しみ、アルツハイマー症も進行していたという。89 年出所してルイジアナの自宅に戻り、93年に死亡した。
  • カルロス･マルセロ （1910～1993)
  • カルロス･マルセロ （1910～1993)
  • カルロス･マルセロ （1910～1993)
  • ジョン･エドガー･フーバー （1895～1972） 1924年 FBI 長官に就任し、1972年の死までその職に留まり絶大な権力をふるった。組織犯罪に関する様々な情報を得ていたにも関わらず、マフィアの存在を否定し、連邦麻薬局長官ハリー･ J ･アンスリンガーの足を引っ張る行為を繰り返した。その後の調査によって、フーバーとマフィアと癒着関係が明らかになっている。
  • ジョン･エドガー･フーバー トミーガンを構えるフーバー
  • フランク・コステロ （1891～1973） イタリア カラブリア生まれ。ラッキー･ルチアーノの右腕で、ルチアーノの国外追放後、ニューヨーク暗黒街のトップに立つ。冷静沈着な性格で、あまり暴力を好まなかった。「暗黒街の首相」と呼ばれ、一時は絶大な権力を握っていたが、1951年、キーフォーヴァー委員会の公聴会に召喚されて失態を重ね、有罪になってしまう。この間にジェノベーゼにトップの座を奪われ、出所後もジェノベーゼに暗殺されかかり、引退を表明した。だが復讐の機会を虎視眈々と狙っていたコステロは、計略を巡らせて、1958年ジェノヴェーゼを刑務所に追い込む成功。その後は引退したドンとして優雅な余生を送った。
  • フランク･コステロ （1891～1973）
  • フランク･コステロ（1891～1973） キーフォーヴァー委員会に召喚されたコステロ (1951)
  • フランク･コステロ（1891～1973）
  • ヴィンセント・ジガンテ (1928-2005) ナポリ移民の子。ニューヨーク生まれ。ヴィト・ジェノベーゼの配下として、カルロス・コステロを襲撃、引退に追い込んだ。のちジェノヴェーセ・ファミリーのボスとなる。バスローブ姿で街を徘徊するなど、訴追を免れるため精神錯乱を装っていたが、ついに1997年収監され、2005年獄中にて病死した。
  • ヴィト・ジェノヴェーゼ (1897-1969) ナポリ近郊生まれのギャング。ルチアーノ･ファミリーの副ボスだった1937年、殺人容疑を逃れるためイタリアへ逃亡。その間ムッソリーニと連合軍双方に通じてイタリアのブラックマーケットを支配したが、ルチアーノの後継の座はフランク･コステロに奪われてしまう。戦後アメリカに戻ったジェノベーゼは、麻薬ビジネスにのりだし勢力を拡大、コステロの投獄に乗じてトップの座を奪い取った。1957年、自らが「ボスの中のボス」であると宣言するためにアパレイキン会議を開くが、警察の捜査が入り多くのボスが逮捕。これによりジェノベーゼの威信も損なわれた。1958年、ついに自身も麻薬取引の罪で投獄され、その後は部下であったバラキの告発もあり、1969年の死まで刑務所を出ることはなかった。
  • ヴィト・ジェノヴェーゼ (1897-1969)
  • ヴィト・ジェノヴェーゼ (1897-1969)
  • ジョー・ヴァラキ（1903～1971） ナポリ移民の子。ニューヨーク生まれ。ヴィト･ジェノヴェーゼの部下として麻薬ビジネスに携わる。1959年、ジェノヴェーゼと同じアトランタ刑務所に入れられるが、そこでボスから裏切りの疑いをかけられる。刑務所内での暗殺を逃れるため、バラキは捜査当局に協力を申し出て、1963年のマクレラン委員会でマフィアの実態について彼の知る限りのことを証言した。ヴァラキの名は、公の前で初めて「オメルタ（沈黙の掟）」を破った男として記憶されることになる。ヴァラキの証言は組織犯罪対策に大きく寄与することになったが、司法長官であったロバート･ケネディが暗殺されたこともあって司法取引は無視され、結局ヴァラキは失意のうちに獄中でその生涯を終えた。
  • カルロ･ガンビーノ（1902～1976） シチリア生まれ。マフィアの構成員としてアメリカに渡った。1957年ボスであったアルバート･アナスタシアを暗殺して後釜に座り、ファミリーを全米一の巨大組織に育て上げる。様々な策略と暗殺の末、1960年代から70年代にかけてニューヨークの 5 大ファミリーを束ねる存在となった。1976年に死亡。死の直前、後継者にいとこのポール･カステラーノを指名していた。ガンビーノの死は、古きゴッドファーザーの時代の終焉でもあった。
  • カルロ･ガンビーノ（1902～1976）
  • カルロ･ガンビーノ（1902～1976）
  • ポール･カステラーノ （1915～1985） ニューヨーク生まれ。カルロ･ガンビーノの死を受けて、1976年にガンビーノ･ファミリーのボスとなる。部下に麻薬の取引を禁じていたが、幹部のジョン･ゴッティが密かに麻薬を扱っていることを知り、制裁を加えようとした矢先、ゴッティに先手を打たれ暗殺された。
  • ポール･カステラーノ （1915～1985）
  • ジョン･ゴッティ （1940～2002） イタリア ナポリ移民の子。ニューヨーク生まれ。ボスのポール･カステラーノを殺して、1985年にガンビーノ･ファミリーのトップに立った。人目に付く言動から捜査当局にマークされるが、何度起訴されても無罪になることから「テフロン･ドン（傷がつかないドン）」の異名を取る。だが1990年12月に逮捕された時には、裏切った部下の証言によって、ついに有罪となった。マフィア最大のファミリーを率いる彼の失脚が、イタリア系マフィア没落の大きなきっかけになったと言われている。2002年獄中にて死亡。
  • ジョン･ゴッティ （1940～2002）
  • ジョン･ゴッティ （1940～2002）
  • ジョン･ゴッティ （1940～2002） 花火を見る
  • サミー・グラヴァーノ (1945- ) 両親がシチリア出身。ガンビーノ・ファミリーの幹部で、1990 年ボスのジョン・ゴッティーらとともに逮捕された。司法取引に応じたグラヴァーノはゴッティーの裁判では検察側証人として証言、ゴッティー以下多くのマフィア構成員を有罪に追い込んだ。現在、グラヴァーノは証人保護プログラムによって守られている。
  • アンジェロ ブルーノ (1910-1980) シチリア生まれ。フィラデルフィアのマフィアを率いたボス。暴力よりも話し合いを好む態度から、穏やかなドンという異名をとっていた。しかし1980年、部下のジョン・スタンファの運転でレストランから自宅に戻る途中、何者かにショットガンで後頭部を撃たれ殺害された。
  • アンジェロ ブルーノ (1910-1980)
  • “リトル･ニッキー”･スカルフォ （1929～ ） ルーツはイタリア カラブリア。父はジェノヴェーゼ・ファミリーの構成員。1980年代にフィラデルフィアを支配したギャング。ジョン･ゴッティと深い関係を持ち、アトランティック･シティの縄張りを分け合っていた。しかし、1989年にスカルフォと部下 18人が投獄されたことがきっかけとなり、ゴッティにも追及の手が伸びる。スカルフォは 55年の刑で現在も服役中。
  • "リトル･ニッキー"･スカルフォ （1929～ ）
  • ジョン･スタンファ （1940～ ） シチリア生まれ。1964 年、新婚の妻を連れてニューヨークに移住。カルロ・ガンビーノの下で数年働いたあと、フィラデルフィアに移る。忠誠心の厚さを買われボス の運転手を務めた。1980年、ブルーノが車中で銃撃された時、運転席にいたのも彼である。スタンファも傷を負ったが、命に関わるようなものではなかった。ブルーノ殺害に関する裁判では一貫して関与を否認、また組織についても何も話さず、偽証罪で 8年の刑を受けた。コミッションの許可無しにボス殺しを行った犯人たちは、組織によって次々と「処刑」されたが、彼は処分を免れている。出所したスタンファは1991年、スカルフォの収監で空位となったフィラデルフィア・マフィアのボスの座につく。だがこれを認めないジョーイ･マリーノの一派と激しい抗争となり、その血みどろの殺し合いはフィラデルフィアを恐怖に陥れた。1994年スタンファは再び逮捕され、殺人共謀などの罪により終身刑となった。現在も服役中。
  • ジョン･スタンファ （1940～ ）
  • ジョン･スタンファ （1940～ ） フィラデルフィア・デイリー・ニュース　”スタンファ 殺しのリスト -「新聞記者と弁護士会の元会長も標的だった」 と情報提供者語る"
  • ジョーイ・マリーノ (1962～ ) フィラデルフィア生まれ。父はニッキー・スカルフォの部下。1990年代前半のジョン・スタンファとの全面抗争を生き延び、その後地元の麻薬ギャングにも命を狙われたが切り抜けている。2001年に強要、違法賭博等で14年の刑を受け (殺人、麻薬密輸については無罪)、2011年に出所。現在のフィラデルフィア・マフィアの事実上のボスと見られている。
  • ヴィト・カッショ・フェロ (1862-1943?) シチリア・マフィアの伝説的なドン。地元議会の議員でもあり、犯罪集団のボスというより「寛大な地方領主」のように振舞った。1900年代初めには数年間アメリカで活動し、ニューヨークのモレロ・ギャングに「みかじめ料」のシステム（喜んで支払うだけでなく、感謝から手にキスするような）を教えたという。また配下をアメリカに送り込み、現地マフィアを自らの支配下に置くことをもくろんだ。しかし1926年、ファシスト政権下でのマフィア撲滅運動からは逃れられず、終身刑で収監され徐々に影響力を失っていった。連合軍の侵攻に備えて刑務所が疎開した時、獄舎に置き去りにされ衰弱死したとも、移送先の刑務所で病死したともいう。
  • シチリアの男たちを写した古い写真
  • アメリカン・マフィア年表 (pdf)